総入れ歯(全部床義歯)はこうしてつくる


ここでは総入れ歯のつくりかたを説明します。歯科技工士によって、また歯科医師によってそれぞれの工程、材料、器具は細かいところでことなります。またひじょうに細かい工程は省略している部分も有ります。あくまで基本的な(よって、ごく一般的な)つくりかたであることをお断りしておきます。( )内は専門用語です。



ここまでには歯科医師により、[はぶ](歯肉のこと。広島弁でしょうか?)の治療(ティッシュコンディショニング)が終わっています。また今まで使っていた入れ歯(義歯)を新調する場合です。


この色の(番号)の説明が歯科医師の手による治療、この色の(番号)の説明が技工士の製作工程です。

(60枚の写真を使用しておりますので少々重いです)



(1) このような型(印象)をとる道具(トレー)を使用します。
この上に型を採る材料(印象材)を盛って口に入れます。


(2) (1)の型を採る道具(トレー)で型を採り、石膏模型を作り
その模型上で技工士によりこのような患者さん個人に合わせた型を採る道具(個人トレー)を作ります。
これでもう一度正確な型を採ります。


(3) 歯科医師により型がとられます。
この患者さんの場合は型を採る(印象採得)のに上記のトレーを使用せずに今まで患者さんが使っていた、
入れ歯をトレーのかわりに使用し、その中に型をとる材料(印象材)を入れて口に入れて[はぶ]の型を採る。


(4)歯科用石膏(ここでは歯科用硬石膏)を水で練ります。


(5) 型(印象)に石膏を流して固める(この場合は入れ歯)。
固まるまで1時間以上待つ。


(6) 固まったら顎の動きを模した道具(咬合器)に石膏でつける。
普通は(8)の作業に飛ぶところをこの患者さんの場合は今使っているいればを使用して咬みあわせを見た。


(7) もう一度正確な咬みあわせを見るための道具を作るために石膏模型を咬合器に付けたところ。


(8) 石膏模型の周りをきれいにします。


(9) 小さな傷なども修正します。


(10) 入れ歯が強く当たってはいけないところに0.2mmの厚さの鉛板を瞬間接着剤で張り付けます。


(11) 上下の石膏模型に鉛板を張り付けたところ。もちろん最終的には出来上がりの前に剥いで取ります。


(12) プラスチック(レジン)の分離材を塗ります。


(13) 咬みあわせを見るための道具(基礎床)を作るために材料の粉と液を混ぜます。


(14) 5分あまりでかちかちに固まりますのでその前に大まかな形をナイフで作ります。


(15) 固まったらきれいに形を整えます。


(16) 咬みあわせを見るための道具をパラフィンワックスで作ります。


(17) (15)で作ったプラスチックの上にパラフィンワックスを盛って咬みあわせを見る準備がで出来たところ。
これで患者さんが来院されるのを待ちます。


(18)
歯科医師の手で歯が有った時の上下の顎の間隔を再現するように咬みあわせを見る。


(19) 高さを調節しているところ。
この患者さんは永年の習慣で下顎が前にでて咬むようになっていた。


(20) この段階で咬み合わせとともに、唇、頬の張り具合や、大きさ、型を採ったときの正確さなども見る。
また顔の形も人工歯の形を選ぶ参考になる。(ほぼ顔の形と歯の形は似ているといわれている)
いままで使っていた入れ歯も参考にします。


(21) 咬みあわせを見た後、また石膏模型を咬合器に付け直す。これは咬合器をひっくり返して付けています。


(22) 入れ歯用の人工歯。左側の二つが上下の前歯。右側の二つが上下の奥歯。
ここではプラスチックの歯(硬質レジン歯)を使用した。陶器製などもあります。


(23) 歯科医師の採った咬みあわせのワックスの出っ張りに合わせて、ワックスを暖めて柔らくくしてから上顎の前歯を並べたところ。


(24) 下顎の前歯も並べる。


(25) 奥歯も並べ終わった。


(26) でこぼこを弱いガスの火で滑らかにする。


(27) 全部の歯がきれいに咬むように、色の付いた薄い紙(咬合紙)を咬ませて
顎の部分を前後左右に動かして、強く当たる歯の部分を削る。
これで患者さんが来院されるのを待ちます。


(28) 歯科医師の手で口のなかで、咬みあわせや人工歯の並び具合などを見る。


(29) 患者さんに歯並びなどが気に入っていただけたか確認してもらう。よければ歯科技工士に送る。


(30)上顎のプラスチックの部分(口蓋)を切り取ります。
(厚さを均一にするため、場合によってはそのまま作ります)


(31) 上顎の部分を切り取ったところ。


(32) 周りをパラフィンワックスで焼き付けます。


(33) 切り取った上顎の部分にパラフィンワックスを付けます。(1.6mmくらいの厚さ)


(34)ワックス、で上下の入れ歯の最終的な形が出来上がったところ。


(35) 石膏の模型の部分をアルミ箔で包む。後で模型を壊さずに取り出すため。


(36) ワックスの部分をプラスチックに置き換えるための金属製の入れ物(フラスコ)。上下に分かれます。
(これは合わせてひとつ。向かって左側が上、右側が下半分)


(37) 模型の部分を石膏で埋める。向かって左側が下顎、右側が上顎の入れ歯。
この写真では上顎のみ石膏で埋め終わったところ。固まるまで30分以上待ちます。


(38) 石膏の部分に石膏分離材を塗ります。


(39) ワックスと人工歯の部分に石膏を盛ります。30分位して固まったらまた石膏分離材を塗ります。


(40) フラスコの上半分をのせて隙間に石膏を流します。蓋をして、また固まるまで30分以上待ちます。


(41) 5〜10分、湯に浸けてワックスを柔らかくします。


(42) 湯から出してフラスコを二つに割ります。


(43) プラスチックの部分を取り除いてから熱湯でワックスを完全に流します。


(44) 人工歯と鉛板だけ残ります。石膏の部分にプラスチックの分離材を塗ります。
ワックスの溶けた空洞の部分が[はぶ]のピンクのプラスチックになります。


(45) 人工の歯肉[はぶ]になるプラスチック(アクリリックレジン)を作ります。粉と液をなじませます。混ぜると泡が入るので混ぜません。


(46) (45)の後10〜15分待ちますと餅のような硬さになりますので、
それをセロファンでワックスを流して空洞になった部分に押さえつけます。


(47) 二つに分けたフラスコを合わせて油圧でプレスします。


(48) フラスコの上下の間にセロファンを入れてプレスしていますので二つに割れます。
余分のプラスチックが出来ますのでこれを切り取ります。
(

(49) (47)(48)を二度ほど繰り返した後、金具で締めて押さえつけたまま60度Cの湯に1時間、
100度Cの湯に30分くらい浸けてプラスチック(加熱重合レジン)を完全に固めます。


(50) (49)の後、湯に浸けたままで室温まで冷えるのを待ちます。
その後フラスコより取り出します。


(51) フラスコから取り出した入れ歯。
ワックスがピンクのプラスチックに置き換わって入れ歯の格好になっています。


(52) 再び咬合器に付けて固まるときに変形していたら(ほんのわずかですが)その分の咬みあわせの変化を修正する。


(53) 咬みあわせを修正しているところ。


(54) いろいろな道具を使ってきれいに艶を出します。
これがけっこう時間がかかります。


(55) 研磨用の砂をブラシに付けてこのような機械で研磨をします。


(56) 研磨が終了してやっと入れ歯が完成しました。患者さんの来院を待ちます。


(57) 歯科医師の手により患者さんに入れてみたところ。


(58) もう一度咬みあわせの調整やあたって痛いところがないかなどを調べます。


(59) すべての調整が終わって患者さんに鏡を見てもらっているところ。


(60) 「入れ歯の写真を撮らせて下さい」とお願いしたところ大きく口を開けて見せてくださいました。
患者さんはもちろん、スタッフも一番うれしい瞬間です。




 いかがでしたか? 歯科技工士の工程をおもに紹介しました。 このようにしてひとつの入れ歯が歯科医師や歯科衛生士や歯科技工士やその他のスタッフの手により完成します。
 患者さんがおいしくご飯が食べられるように頑張っています。
 でも、本当は入れ歯を入れなくてすむようにしっかり歯磨きをしてください。 どんなに私たちが頑張っても健康な自分の歯には、かないませんから・・・しっかり歯磨きして大事にしてくださいね。
 ただし、入れ歯は歯磨き粉をつけて磨きすぎると摩耗しますので気をつけてください。また使用しないときは清潔な水を入れたコップなどに浸けておいてください。乾燥するとプラスチックの部分が変形します。

 入れ歯の場合は、後に部分的に痛くなる場合がまま有ります(「あたり」といいますが)ので、痛くなったら我慢せずにすぐに作った歯科医院に行って下さい。